アクティビティごとに2-3割、多い場合は6-7割の無駄な時間があるという作業実態を観察する際には、同時に、「なぜ、その無駄が発生してしまうのか」という理由も観察されます。その観察内容をアクティビティごとに書きだしたのが図版2です。
図版2 アクティビティごとの無駄の中身を見る

これらの内容は、「どれだけの無駄があるか」という時間の情報と対にして、アクティビティごとに把握したというところに意味があります。実際に改善するうえで、どの作業のどこを改善すればどれほどの効果が期待できるかということが、明らかになったのです。
◆「作業の標準化」ができている物流センターは稀
「作業の標準化」は、よく耳にする作業改善のキーワードです。作業効率を上げるためには作業を標準化して、どの作業者も同じ手順で作業するように訓練するべきです。そのためには、最も無駄のない手順である「標準作業手順」が定まっていなければなりません。
このような問題意識はあっても、物流センターで「作業の標準化」ができているケースは、実は、かなり稀であると言えます。全くやったことが無いというセンターさえ珍しくありません。
物流センターの作業はオーダーの内容によって手順が異なったり、例外作業が多く発生したりして、やや定型化しづらいという事情は、無論あります。このために、「うちのセンターでは作業の標準化は無理だ」とあきらめてしまうようです。
◆標準作業手順を定める4つのコツ
@ 作業は20-30個のアクティビティに区分する
物流現場での作業標準化への第一歩は、アクティビティを適度な細かさで整理することです。細かすぎるのは禁物です。「つかむ」「歩く」「数える」というような動作レベルの区分ではなく、「ピースピッキング」「スキャン検品」というように目的を持った動作のかたまりレベルで、作業をとらえていきます。アクティビティ数は20-30程度、多くても40個以内が目安です。
A 実の作業から無駄を省いたものを標準作業手順とする
標準作業手順は「無駄のない手順」ですが、これを定義するやり方は「現在の作業を観察して、無駄を省く」というアプローチが適当です。現在の作業環境、作業者のレベルを前提として、あきらかに無駄な動きを省くということです。
たとえばピッキングの標準作業手順を定める場合、本来的には、現在の作業現場の設計に改善余地があるということが多くあります。商品の配置をもっと合理的にしたり、ラックのレイアウトを変えたりすれば動線を短くできるはずであるとか、ピッキングリストの並びが悪く補正しながら作業をしなければならないといった内容です。「標準作業手順」は、このような問題も前提条件として、今の現場で達成できるベストな手順を設定します。改善をした暁には「標準作業手順」を変える、それまではこの手順でいこうというものを決めるのです。
B 標準作業時間も現実の平均値で管理
標準作業手順で作業した場合の1処理あたり時間である「標準時間」も、実態を観察して無駄な動作を省いたものの平均値で定めます。1件1件のピッキング作業の所要時間には格差がありますが、これを1件ずつ追いかけても管理はできません。平均的などの程度のパフォーマンスが期待できるかということを設定するわけです。
C上位のアクティビティから標準化すればよい
20−30個のアクティビティをすべて標準化しようと考える必要はありません。主要なアクティビティから1つずつ取り組んでいけばよいのです。1日の作業の多い順に並べて、上位10アクティビティの時間を取れば、全作業時間の7-8割をカバーしているのが普通です。上位3つのアクティビティだけでも標準化されれば、確実に効果は上がります。
posted by uchida at 09:08|
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物流ABCでつくる20枚の図版
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